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このテーマの参考書

評価される博士・修士卒業論文の書き方・考え方
レポートというには大きすぎる論文を扱っているが、基本は同じ。

意見、仮説と知見の区別

 多くのレポートを読んでいてたびたび出くわすのが、自分の意見と、確認できる情報とを区別していない問題です。例えば十分な根拠を示さずに「日本の外交戦略はなっていない」と書いてあるのは、書いた人の意見にしか過ぎません。ところが往々にしてこの意見を断定的に書いておいて、例えば「だからアメリカの追随ばかりしている。」と続いてしまいます。

 さらに往々にして、このような主張をする人に「日本の外交戦略がなっていないと思う根拠は?」と聞くと「アメリカの追随ばかりしているから」という答が返ってきたりします。これでは全く話になりません。

 論理を「日本の外交戦略はなっていない。だからアメリカの追随ばかりしている。」というように構成したら、論文・レポートとしては2つの点で失格です。

  1. 「日本の外交戦略はなっていない」という根拠が示されていません。これは根拠を示さない単なる個人的な意見・見解に過ぎません。
  2. 仮に「日本の外交戦略がなっていない」ことが事実だとしても、それが「アメリカの追随ばかりしている」理由の証明にはなりません。

 ここで、日本の外交戦略がなっているかいないか、アメリカの追随をしているかしていないか、という議論はしませんが、論拠を示さない論理の展開は、単なる意見の表明であって、論文にはなりえません。

 論文・レポートでも自分の意見や感想を書いてもかまわない場合もありますが、その時にはそれが自分の意見や感想に過ぎず、証明や資料が不十分であることを認めておくことが重要です。そのためにはまず断定的な表現は使わない。例えば「日本の外交戦略はなっていないように思う」と書いておけば、それが「感想」であることが明確になります。

 さらにそれに基づいた議論を行うのであれば、あらかじめ前提となっている「日本の外交戦略はなっていない」という意見は「仮説である」ことを明確にしておく必要があります。

 基本的には感想・意見に基づいた推論は行わないことです。感想や個人的な意見に基づいてそこから論を形成して行ったとしても、それは根拠の薄い、内容のない論文になってしまいます。

 無論仮説であることを明記して提示するのであれば、「これから証明する必要がありますよ」と宣言しているのですからOKですが、個人の趣味として書く論文ならともかく、どこかに提出するような論文やレポートであれば、証明をしない仮説からの推測もできるだけ避けた方が良いでしょう。

 いずれにしろまず重要なのが、自分が主張している、あるいは根拠としていることが、自分の意見・感想なのか、仮説なのか、文献などの二次資料に基づくものであるのか、第三者にも繰り返すことのできる実験や観察の結果であるのか、そうした点を明らかにすることです。これらを区別せずに論を展開したら、その論文・レポートは著しく信用度の低いものとなってしまいます。

論拠を明確に示す

 もし日本の外交戦略がなっていないと主張するのであれば、日本の外交戦略の失敗例を積み重ねる必要があるでしょう。読者が「なるほど、これだけ失敗があるのなら、外交戦略はなっていないと考えるのは合理的だ」と思えなくてはなりません。

 さらに「アメリカへの追随」について証明するには、何をアメリカへの追随と定義できるのか、そして他の国に比べて日本だけがアメリカへの追随が多いのか、をまず明らかにする必要があるでしょう。「日本は確かにアメリカに追随していると言える」と読者が納得して初めて、「では外交戦略が情けないことと、アメリカへの追随の因果関係は?」という疑問に進むことができます。もちろんここでも関係性を示唆する証拠の積み重ねが必要となります。

 
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