小論文の書き方・レポートの書き方論文執筆の注意/省略語の使い方

論文での省略語の使い方

省略語の使い方

論文でよく使うのが言葉を短く縮めた省略形です。組織の名前や物質名、その他いろいろなもので使われています。例えば世界銀行を世銀と略したり、英語だと World Bank をWBと略したりします。でも、やたらと縮めて使うのも考え物です。

実はこうした省略形が発達した背景には、かつてのタイプ環境、執筆環境が影響しているのだそうです。昔は手書きか、あるいはタイプライターを使っていましたから、なるべく短く、間違いを少なくすることが必要であったために、省略形が発達したという側面があるのだそうです。

オーストラリアで修士課程に在学していた時、指導の教授から「あまり短縮形を使わないように」と注意され、その時にこの話を聞きました。さらに言われたのは

「コンピュータ時代にはスペルチェッカーもあるし、さほど間違いを気にする必要はなくなった。それよりも、読んでいて意味がすぐわかるように気をつけなさい。」

でした。

つまり、やたら短縮形を使うと、読んでいる人が「あれ?これは何の意味だっけ?」とわからなくなり、滑らかに読み進めることができなくなる恐れがあるので、短縮形の使用はできる限り減らしてフルスペルで書くほうがよい、ということです。

省略語の使用が一般的なもの

もちろん既に一般化して、誰もが知っているような短縮形はそのままでかまいません。例えばIMFなら、いちいち International Monetary Fund と書くよりも、IMFでわかりますし、かえって省略語のほうが意味もわかるし読みやすくなります。

ではPRSPはどうでしょうか?これは筆者の関係する分野では Poverty Reduction Strategy Paper の略です。日本語だと「貧困削減戦略文書」といいます。一般的ではありませんから、初めて見た人にはぴんと来ないことでしょう。

さらにPPAが加わったらどうでしょうか。これは Participatory Poverty Assessment の略です。そこにPRAが並んだら?これは Participatory Rural Appraisal です。PRSP、PPA、PRA の三つがひとつの論文に出てきてもおかしくありません。これらはすべて同分野の用語ですから。

慣れない人がこの三つの用語、さらに他の似た用語が省略形で並ぶ論文を見たら、多分理解するのに苦労することでしょう。筆者自身、よく似た新たな略語が使われている文章に出くわすと、頭が混乱します。

ですから、このような場合には略称をあえて用いず、フルスペルで書くほうがよいのです。何度も何度も書いてもかまいません。それでも読み手には意味がはっきりするからです。

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